2025.10.02

【報告】長野県へ、気候変動から地場産業を守る支援策等について提案を行いました

持続社会連携推進機構アース・シェルパは、「長野県ゼロカーボン戦略」中間見直し()に際し、“地場産業×気候変動” の観点から、地場産業を守り、次世代につないでいくための脱炭素運動の展開と、緩和と適応の両輪の推進について、長野県環境部ゼロカーボン推進課宛に、9月5日に提案書の提出、9月10日に面談・意見交換を行いました。

本提案は、8月22日開催の『気候変動×地域産業勉強会 in 諏訪』での意見を基に、県ゼロカーボン戦略と照らし合わせて整理したものです。


「長野県ゼロカーボン戦略」および中間見直しとは?

県は、2050年のゼロカーボン実現に向け、2021年度から2030年度までの実行計画を策定しています。中間見直しは、策定から5年目(中間)にあたる今年度、これまでの取組の成果を踏まえつつ、新たな課題や国内外の動向の変化に対応する内容へ見直すために、必要な事項の調査、検討を行うことを目的としています。現在、県のゼロカーボン戦略推進本部によるステークホルダーヒアリングや、環境審議会地球温暖化対策専門委員会などにおいて、検討が進められています。12月から1月にかけてパブリックコメント(住民からの意見公募)が予定されており、その後3月ごろに改定される予定です。

提案の要旨

  1. 発酵食品産業を気候変動適応策の対象とすべき重要な地域産業として位置付けること
  2. 発酵食品産業事業者の気候変動緩和・適応策の導入を後押しすること
  3. 発酵食品産業を入り口に、気候変動の自分事化と行動変容を喚起・発信すること

※勉強会においては、日本酒・味噌の事業者の方にご登壇いただいたため、発酵食品産業の中でもこの2テーマにフォーカスをしています。


発酵食品産業を気候変動適応策の対象とすべき重要な地域産業として位置付ける

県のゼロカーボン戦略には、例えばスキー産業については再エネ導入の促進や環境に配慮したスノーリゾートとしての観光地域づくり支援等が記載されていますが、同じく長野県を代表する発酵食品産業については、記載されていません。

長野県の発酵食品産業の重要性

日本酒
・酒蔵数:78蔵(全国第2位)
・清酒製造業国内売上:87億6,200万円(2023年、全国TOP10)(

味噌
・出荷額:732億円(2022年)
・全国シェア:50.9%(
・蔵数:約100軒(全国規模のトップメーカーから小規模蔵まで)

これらの産業は製造業を超えた文化産業としての価値を創出し、多くの雇用を生み出しています。長野県の発酵食品産業も、スキー産業と同様に気候変動適応策の対象とすべき重要な地域産業として位置付けることを提案しました。

長野県は、「発酵食品」で人々の「健康長寿」を目指す決意表明として、「発酵・長寿県」を宣言している

発酵食品産業事業者の緩和・適応策導入の後押し

温度管理が重要な発酵食品産業において、従来の自然冷却では対応困難となり、気温上昇により冷房機器の導入が避けられない状況です。特に味噌の場合、製品への影響のみならず労働環境にも影響が懸念されています。昨今改正された労働安全衛生規則における、特定の作業環境下では熱中症対策が罰則付きで義務化などを踏まえると、該当しないとしても、冷房設備等の導入は必須です。

これらの適応策の導入と、緩和策(再生可能エネルギーの利用・導入拡大)のセット導入の推進、そしてこれに必要な資金的・技術的な支援について、提案しました。


発酵食品産業を入り口とした気候変動の自分事化促進

味噌や日本酒の製造現場で気候変動により生じている課題や対策への取り組みは、消費者にまだ十分届いていません。地域に根差した発酵食品産業は住民にとって身近な存在であり、これらと気候変動を結びつけた発信は”自分ごと化”につながりやすく、行動変容の動機づけとなります。

【消費者の意識

日本酒造組合中央会の調査(2022年12月〜2023年1月)では、「地球環境や労働環境に配慮したサステナブルな活動をしている酒蔵の日本酒を積極的に購入したい」と76.7%が回答しており、環境配慮が購入意欲につながることが分かっています。(

事業者単体では限界のある気候変動課題だからこそ、蔵元や農家だけでなく、日本酒や味噌を楽しむ消費者とともに、好きな商品を作り続け・飲み続けられる地域・社会に向けて、協働して行動していくことが必要です。

生活に身近な発酵食品産業と関連づけた発信強化により、行動する人々を増やす機会の創出を提案しました。


今後も、県の政策見直しに注目すると共に、引き続き県内他エリアの事業者の方々との意見交換を実施できればと考えています。

以上

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