
持続社会連携推進機構アース・シェルパとSGIは、12月3日、衆議院第二議員会館にて、「『COP30現地参加報告会』 ー 日本が脱炭素経済競争に勝つために把握すべき世界のトレンド ー」を開催しました。会には約40名が参加し、COP30現地に参加した国会議員・ビジネス・NGO・ユースそれぞれの立場から報告や課題共有が行われ、今後に向けて多くの示唆が得られる機会となりました。
本報告会は、11月10日〜21日までブラジル・ベレンで開催されていた「第30回気候変動枠組条約締約国会合(COP30)」の結果を受けて、世界の脱炭素トレンドと再生可能エネルギーの加速的な普及状況について、科学とデータに基づいた最新動向を政策決定者である国会議員各位に共有し、日本の戦略的な立ち位置の判断に資することを目的に開催しました。
開会にあたり、SGI 開発・人道部長 浅井伸行氏からは、宗教系NGOとして現地参加をし、ブラジル・ルラ大統領のかけ声のもと始まった「グローバル・エシカル・ストックテイク」(※)に関わった件について、共有がありました。これまで、何をしなければいけないかについては議論があったものの、なぜ行動が起きないのかという倫理的な側面については議論が不十分であったことから、世界から多数の宗教などを土台とする団体が主導し、各地で対話が行われたこと、そのパビリオンが設置され、世界的な集まりがベレンで開催されたことが報告されました。
国会議員から:竹内真二参議院議員
日本の国会を代表し参加した、公明党の竹内真二参議院議員は、毎年参議院が日本の国会を代表して2名をCOPに派遣しており、今回はその枠として現地参加した経験を共有しました。現地で開催された世界議員会議(IPU)に出席し、ジェンダーや地球温暖化への適応策など4つのテーマで議論した内容を報告しました。特に、先住民や女性の参画について重要度が今まで以上に増している点や、例えば二国間クレジット制度(JCM)の活用などでは、各国からポジティブなコメントも聞かれ、具体的な取り組みで日本が評価されている点にふれ、米国がCOPを欠席するなど国際協調が危ぶまれる中、合意文書をまとめることができた意義が大きいことを強調しました。
総論報告:持続社会連携推進機構アース・シェルパ 代表理事 小池宏隆
当機構(持続社会連携推進機構アース・シェルパ)代表理事の小池宏隆は、今回のCOP30が「本当に1.5度目標を守れるのか」という点が最大の焦点だったと言及し、このままでは2.3〜2.8度の世界に向かってしまうという警告があるにも関わらず、各国のNDC(国別削減目標)を積み上げても必要な排出量削減の17%程度しか満たさず危機にあるという最新の報告書を紹介しました。また、NDCの野心的な実施をどう進めるかが今後の鍵になる点、化石燃料からの脱却については、80カ国以上がロードマップ作成を提案した結果、交渉合意には至らなかったものの、議長主導で作成をしていくことになった交渉結果を共有しました。再エネ関連技術の伸びや中国の存在感が増す中で、日本が競争に遅れないためにはギアを上げる必要があること、そして、日本が脱炭素技術へ大きく投資を進めており、これらを後に導入する際に、国内の非科学的な言説や再エネ反対の声が足かせになるリスクを強調し、これらの誤情報対策を進めることの必要性を訴えました。
ビジネスから:AGBIOTECH株式会社 代表取締役 中西隆允氏
AGBIOTECH株式会社代表取締役の中西隆允氏からは、農業分野でのメタン削減と生物多様性保全のジレンマについて具体例とともに説明がありました。現在の炭素クレジットの仕組みが脱炭素のみの「部分最適」に偏ってしまいがちな点や、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を基準にした新しい発想や仕組みの必要性を述べました。また、世界では反ESGの動きがある一方で、実際には金融も企業も脱炭素の方向性を変えていないこと、今後は脱炭素と生物多様性を踏まえた原材料調達がますます求められるだろうという見通しを示しました。その中で、環境保全型農業は気候変動に強く、干ばつや豪雨にも耐えられる点、耕作放棄地の活用による食料自給率向上や、日本の高品質な農産物の輸出による外貨獲得など、産業としてのポテンシャルが大きいことにも触れました。これらの取り組みは産業構造の変化をもたらすビジネスチャンスであり、早急に手を打つことが重要だと語りました。

上:中西隆允氏(AGBIOTECH株式会社 代表取締役)(中央)
NGOから:「環境・持続社会」研究センター(JACSES)事務局次長・気候変動プログラムリーダー 遠藤理紗氏
NGOの立場として、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)事務局次長・気候変動プログラムリーダー 遠藤理紗氏からは、主に適応分野の議論について報告がありました。COP30では、COP28ですでに設定されている分野別・サイクル別目標をどう測るのかが大きな論点だったと説明がありました。結果として、今回は59のベレン適応指標を含む決定文書が採択されたが、完全合意とは言えない状況であり、引き続き議論されると共有しました。全体として、議長国の采配の困難さや、各国の状況(経済、慣習、宗教など)を尊重しながら、多国間交渉プロセスを効果的に機能させるかが今後の課題だと指摘しました。
ユースから:持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)普及啓発部 藤田実里氏 / Climate Youth Japan (CYJ) 共同代表 北川諒氏
ユースの立場として、持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)普及啓発部 藤田実里氏からは、世界の若者にとって脱炭素はすでに「前提」になっていることを共有し、特に脱化石燃料への意識が高い旨の説明がありました。また、日本以外では、アジアの学生を中心に大学のプログラムを通じて政府代表団の一員として参加するケースが多く、大学が実践の場として機能している点、またそれが卒業後の環境分野での起業につながるといった声があることについても言及しました。
同じくユースの立場として、Climate Youth Japan (CYJ) 共同代表 北川諒氏からは、世界のユース代表者とともに、グローバルサウスとノースでどのように連携できるかの議論を行なった点について共有し、日本政府によるグローバルサウスでの取り組みについて、その認知度の低さを指摘し、今後の情報発信の工夫や改善について言及しました。また、アーティストやインフルエンサーの発信に基づく行動変容が若者の間で広がっており、SNSを通じてグローバルな連携が生まれている点や、GXや脱炭素分野に関心がある若者が民間企業でどのようにキャリアを築いていけるのかが見えづらい課題についても触れました。

上:Climate Youth Japan (CYJ) 共同代表 北川諒氏(右から1人目)
また、本報告会には、立憲民主党の山崎誠衆議院議員 、小川淳也衆議院議員にもご参加いただき、途中コメントを頂戴しました。立憲民主党環境・エネルギー総合調査会事務局長を務める山崎議員からは「報告をしっかり受け止め、化石燃料や森林破壊の課題・対策等について、環境分野の主流にしていきたい。」、小川議員からは「気候変動対策はもとより、いずれ日本をエネルギーの輸出国にしたい。そういう思いで取り組みたい」とご発言をいただきました。その他、数名の議員秘書にも参加いただきました。
終わりに
近年オンラインで行われることが多い気候変動COPの報告会を、日本国会を代表して現地参加された竹内真二議員と対面で実施できたことは、大変貴重なことでした。多くの方にご参加頂き、気候変動と国際協調両方に逆風が吹いている中、まだまだ関心があることを感じました。我が国は、気候変動分野における厳しい競争に晒されており、特に主要分野である、太陽光、風力、電気自動車では、先頭をリードしていたものの、現在は後塵を拝す状況です。脱炭素技術・競争において日本の産業を守り育てていくためにも、国際協力の中で脱炭素分野で貢献を拡大していくためにも、より一層の取り組み強化と実装の加速が必要です。
以上
