2026.02.11

【開催報告】鳥取県八頭町で気候変動と農・暮らしを考える『未来会議 inとっとり』を開催しました

持続社会連携推進機構アース・シェルパは12月18日、鳥取県八頭町の八頭町商工会館にて「気候変動で私たちの農と暮らしはどう変わる?『未来会議 in とっとり』」を開催しました。本イベントは、農事組合法人八頭船岡農場、有限会社北村きのこ園、市民エネルギーとっとり、との共催によるものです。当日は、地域の住民や農業者、事業者など約30名が参加し、講演・パネルディスカッション・グループワークを通じて、気候変動に直面する地域の現状を共有するとともに、将来に向けた具体的な方向性について議論を深めました。

気候変動の現状や地域・農業への影響

農業現場の「異変」を起点に、地域の未来のための対話を

共催団体の有限会社北村きのこ園 北村大司氏からは、気候変動による農業への影響と現状について報告がありました。北村氏は「気候変動の影響によりきのこの栽培環境が変化し、これまで以上に電気代を要している」と実情を説明し、その上で「若い人材や新しい技術とともに、明るいモデルを地域から創出したい」と、将来に向けた展望を語りました。

写真:左:有限会社北村きのこ園 北村大司氏 右:北村きのこ園の様子

講演:気候変動の影響について〜これからの地域づくりと未来の選択〜

共催団体の市民エネルギーとっとりの手塚智子氏は、日本・鳥取における気候変動の影響や、経済的視点を含めた今後の対策について講演を行いました。

手塚氏は、鳥取県内における気温上昇や極端現象の増加、災害リスクの高まりを提示し、これらが農業や健康、生活に及ぼす影響を整理して解説しました。

対策として、「緩和(排出削減)」と「適応(影響への備え)」の両輪が必要であることを示し、鳥取県内で進む品種開発や調査研究の状況・支援策についても言及しました。

あわせて、八頭町の産業別エネルギー消費量構成比においては、農林水産業が最も多くのエネルギーを消費していることにも言及しました。さらに、八頭町内で使用されるエネルギーにかかる費用の多くが域外へ流出しており、その額は年間で約10〜18億円にのぼると推計されていることに触れ、こうした状況は、化石燃料への依存が環境面だけでなく地域経済の観点からも大きな課題であると提起しました。

講演の後半では、農業分野における脱炭素とエネルギーの地産地消を同時に進める手法として、具体的な事例を交えつつ、地域資源を活かした再生可能エネルギーの可能性が示されました。特に全国各地の先行事例の中でも、農地で農業を継続しつつエネルギーを生み出す「ソーラーシェアリング」の可能性について紹介しました。

手塚氏は、「人・資源・お金が地域で循環し、住民が未来を主体的に決めていくことが重要だ」と強調しました。

写真:市民エネルギーとっとり 手塚智子氏

パネルディスカッション:現場から見える危機 

パネルディスカッションでは、共催団体の農事組合法人八頭船岡農場の鎌谷一也氏、鳥取県生物多様性アドバイザーの小宮春平氏から、農業現場で起きている影響や課題についてお話がありました。

鎌谷氏は、「気温上昇で作物の生育時期が変化し、雑草やカメムシなど害虫被害が増えている。農業は環境と密接に関わるからこそ、環境変化への対応が難しくなっている」と述べ、将来的な食料・水をめぐる不確実性にも言及しました。

小宮氏は、自身が務める一般社団法人湿地管理組合の取り組みも紹介しながら、「今年の夏は酷暑と渇水が顕著で、雨が降らずため池の水が枯渇した。生物多様性を脅かす状況だ」と現場の状況を報告しました。

また、会場からは生産者の声として、「水の回数を増やすなどの対策を行っているが、経済的にも体力的にも厳しい」「病害虫が増えることで作物に影響があり、商品として出すことが難しいケースも出てきている」など、直面する課題について共有がありました。

今後に向けては、鎌谷氏より有機農業の推進や地域の自給力の強化、小宮氏より遊休地やため池を活用した環境づくりなど生物多様性の観点を踏まえた取り組みの必要性が示されました。

写真:右手側2名のうち、左:小宮春平氏 右:鎌谷一也氏

グループワーク:地域のこれから・そのために必要なこと

後半のグループワークでは、会を通しての気づきや、今後どのような地域にしていきたいか、そのために必要なこと等について議論しました。

各グループからは、「年々暑くなっている」「雨が降らず気候が極端」といった現状認識の共有に加え、今後については、「新しい方法を取り入れ、変化に適応した“楽しい農業”をしていきたい」「循環や持続可能性、人との関係性を軸にした地域を作っていきたい」など、地域の将来像について、前向きで多様な意見があがりました。

また、「気候変動を考えることは地域を考えることである」という意見や、「生産者だけでなく消費者・住民を巻き込む必要がある」といった声もあがり、今回のような場を継続的に行っていく必要性についても言及がありました。

特に共通する意見から、今後の取り組みでは下記が重要なポイントだと考えられます。

①食・エネルギー・お金が地域で循環できる仕組みづくり
②人と人との関係性・繋がりを軸に、共に地域を作っていく姿勢・取り組み

写真:グループワークの様子

写真:発表の様子

おわりに

今回の勉強会はゴールではなく、今後の取り組みへとつながる新たなスタートだと考えています。ご登壇の皆様、参加者の皆様からもお話がありましたが、地域の経済循環やこれからの農業・暮らしを考えていく中で、気候変動対策や生物多様性保全の取り組みは、地域づくりの手段として活用できる可能性を秘めています。

引き続き、地域の皆様、農業関係者の皆様、専門家の方々と共に、ディスカッションの場を設けるとともに、具体的な取り組みについても検討を進められればと思います。

以上

ご登壇・ご参加の皆さん、ありがとうございました。

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