2026年2月10日、「望ましい太陽光発電活用型農業(APV)拡大検討会」を開催しました。本検討会は一般社団法人ソーラーシェアリング推進連盟の主催で行われ、同連盟の事務局を務める持続社会連携推進機構アース・シェルパも共催として運営に携わりました。当日は75名を超える実践者、農業者、発電事業者、自治体関係者、研究者など多様な立場の方々にご参加いただきました。
この検討会を開催した背景には、APVにおける不適切事例の増加をうけて、自治体が判断に苦慮する中、農林水産省は「望ましい営農型太陽光発電」の基準策定を進めていることがあります。本検討会は、その方針案と現場の実態とのギャップを可視化し、業界としての論点を整理することを目的に開催しました。
講演1:「農水省望ましい営農型太陽光発電検討会について」
農林水産省環境バイオマス政策課長の木村崇之氏は、昨年からメガソーラーに対する対策パッケージに触れつつ、「地域との共生を図りつつ、農業との両立を大前提とする」という営農型太陽光発電の基本方針が示されました。

写真:農林水産省の方針を述べる木村氏
基本理念として、
- 適切な営農の継続が大前提であり、農地の一時転用は特例的なものであること(収量・品質の低下の恐れがなく、設備は簡易で容易に撤去可能であること)。
- 食料生産基盤としての機能が維持される取り組みであること。
- 農業者の所得向上・経営発展に資する取り組みであること。
- 地域と共生し、地域活性化に資する取り組みであること。
が示され、加えて遮光率30%未満、米・麦・大豆を推奨品目とすること、収量8割維持、地域計画への位置付け、利益還元や撤去費用確保などを要件とする案が提示されました。
講演2: 「農水省望ましい営農型太陽光発電検討会検討委員として現状報告と共有」
次に、市民エネルギーちば共同代表取締役の椿茂雄氏が、農水省との議論の主要な論点と懸念について情報共有しました。

写真:現状報告を述べる市民エネルギーちばの椿氏
椿氏からは、検討委員のみならず、現場に関わる方として、品目に関わらない画一的な規準を採用することの課題について指摘され、そもそもソーラーシェアリングの政策上の位置づけと、データ蓄積の必要性、そして、日本の農業や中山間地をどうするかというビジョン・視点から地域共生の議論をすることの必要性を訴えられました。
パネルディスカッション:各登壇者の視点
パネルディスカッションでは、司会として市民エネルギーちばの宮下朝光氏にご登壇いただき、APVの実践者それぞれの目線から情報提供をいただきました。
一般社団法人太陽光発電協会(JPEA):事務局長 増川 武昭 氏
JPEAの増川氏は太陽光発電事業者としての目線から、国が目指す再生可能エネルギー導入目標の達成にはAPVの拡大が不可欠であり、国内に巨大なポテンシャルがあると指摘しました。一方で、FIT/FIP除外や過度な規制強化が、黎明期にあるAPVの成長を阻害しかねないと強い懸念を示しました。

写真:太陽光発電の導入シナリオと営農型への期待を述べるJPEAの増川氏
石曽根農園株式会社 :代表取締役 石曽根 栄光 氏
群馬県高崎市で農業を営む石曽根氏からは、農業者からの目線として中山間地での実践事例を紹介しつつ、年々申請・更新の複雑化によって負担が増えているという「申請手続きの煩雑さ」が最大の障壁だと指摘しました。これに加え事業継続性の評価に関わる資金調達の困難さ、FIT後の売電先の確保など、現場が直面する具体的課題が共有されました。

写真:農家目線からAPVの参入障壁について述べる石曽根農園株式会社の石曽根氏
株式会社クボタ農業ソリューション本部ビジネスイノベーションユニットGX事業開発部:部長 楠本 敏晴 氏
株式会社クボタの楠本氏からは、発電事業者兼農業機械メーカーの目線から、農業を主軸に200カ所規模で営農型を展開する自社の取り組みを紹介しました。今後は優良事例の発信、データ蓄積、地域ごとのルールについて明確にすることが必要であると提言しました。

写真:発電事業に留まらず地域農業の持続性確保への貢献を目指す株式会社クボタの楠本氏
一般社団法人ローカルグッド創生支援機構:マネージャー 佐藤 直己 氏
ローカルグッド創生支援機構の佐藤氏からは、自治体・地方創生の視点から、地域新電力が担う「ローカルシンクタンク」としての役割に言及がありました。そのうえで、一律の規制は地域の創意工夫を阻害するおそれがあると指摘し、合理的な根拠に基づく制度設計と、自治体の裁量のあり方について慎重な検討が必要であると述べました。

写真:地域の創意工夫を発揮できる柔軟な制度設計の必要性を述べるローカルグッドの佐藤氏
公益財団法人自然エネルギー財団:石田 雅也 氏
最後に、自然エネルギー財団の石田氏から研究者からの視点として、「アリバイ営農」のような悪質事例への対応は限定的に行い、入口規制は参入を促すように間口を広くすべきと提案しました。そのほかFIT/FIP制度における営農型区分の新設、新規就農者の支援、そして収量や遮光率だけでなく、農業経営や地域貢献を含めた総合的な評価の必要性を訴えました。

写真:APVの普及と成功事例の横展開の重要性を強調する自然エネルギー財団の石田氏
ソーラーシェアリング推進連盟のポジション
ソーラーシェアリング推進連盟共同代表である近藤恵氏から連盟での提言内容について紹介がありました。

写真:事業の健全性を多角的に評価する「総合特定評価制度」の導入について述べる近藤氏
APVは黎明期にあり、入口で厳格に排除するのではなく、事業全体を多角的に評価する「総合特定評価制度」への転換が必要であると提案。収量や遮光率といった単一指標ではなく、農業経営の持続性や地域貢献度を含めたスコアリングによって優良事例を後押しすべきだと訴えました。
また、営農型を「特例」ではなく「推進すべき農業設備」として明確に位置付ける政策転換を国に求めました。
分科会:5テーマ別議論の概要
各登壇者からの発表が終わったのち、制度設計をどう改善すべきかという観点から、①生産者、②生産性、③品目、④地域共生、⑤ガバナンスの5つのテーマに分かれて議論しました。

分科会後の全体共有では、「一律基準による排除」ではなく「望ましい事業を増やす制度設計」へ転換すべきだなどの意見が共有されました。
今後に向けて
太陽光発電活用型農業は、土地利用の向上、農業収入の安定化、遊休農地の再生、地域エネルギー循環の構築など、多面的な価値を持つ取り組みです。弊機構は、APVが適切に評価される環境を整えるため、現場と政策をつなぐ中間支援として、多様なステークホルダーを巻き込んだ議論を促進します。望ましい太陽光発電活用型農業の拡大に向け、具体的な制度改善につながる建設的な提案を積み重ねてまいります。
今後も、多様なステークホルダーとともに、食とエネルギーの自給率向上に向けて、取り組みを進めて参ります。
